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人生に絶望した人へ 「逃げる」という選択肢も十分にあり

撮影:Takaaki Yamada

以下の記事では、絶望した気持ちが他人へと向かう例を取り上げました。

人生に絶望した人へ 心の持ち方を変えてみる
このサイトは普遍的な事柄を扱っているので、いちいち個別の犯罪事例は記しませんが、ある者が「人生に絶望して」無関係な人を刃物で刺すという通り魔事件がしばしば世間を賑わせます。 己の人生に悲観したか...

対して、自分へと向かう例が「自殺」です。こちらのほうが数量的には圧倒的に大きな問題です。現在でも毎年、2万人以上の方が自殺しています(*2003年度の34,427人が戦後最悪でした)。

警察庁のデータにみる自殺の原因

最近でも、前途有望な新卒の女性が過労のあまり自殺するという、たいへん痛ましい事件がありました。自殺は個人的事情が動機であると同時に、社会の構造問題とも深く関わってきます。たとえば、景気の動向と自殺者数には相関関係があります。

警察庁生活安全局生活安全企画課が公表した「平成22年中における自殺の概要資料」によると、自殺者の約4分の3は遺書などにより動機が特定できます。それによると、病気などの健康問題が15802人、経済・生活問題が7438人、家庭問題が4497人、仕事・職場の人間関係などの問題が2590人となっています。

つまり、経済問題は自殺原因の第二位です。先進国における貧困は、資本主義や社会制度の矛盾そのものと言えます。しかも、日本の場合には前近代的な企業風土や労働倫理の問題もあります。それが自殺原因の第四位とも関わっているようです。

日本社会に根強く残る悪弊

たとえば、会社にできるだけ長く勤める人ほど信用され、逆に職場を転々とする人ほど人間的に信用されない傾向があります。一般に大企業や官公庁ほど中途採用者が不利な扱いを受けます。転職がキャリアアップに繋がる人は未だに少数派のようです。同じ企業グループ内の地方支社や子会社出向でさえ、落伍者扱いは珍しくありません。

このような不文律は、たしかに組織への忠誠と献身を高めるのに効果的かもしれません。他方で、人権・家庭無視の異様な企業風土や、苛めに代表される陰湿な人間関係をはびこらせる原因の一つともなっています。

本来は「たかだか転職」ですが、それが清水の舞台から飛び降りるがごとき「人生の冒険」になってしまうと、会社に対して心理的に逆らえなくなってしまいます。家庭を持った人ほど益々そういう立場へと追いやられます。会社のほうも同調圧力でモーレツ主義や過労を強いることが可能になります。これではもう就職というより“就社”ですね。未だにこういう前近代的な企業風土や労働倫理の犠牲者が絶えません。

なぜ困難に立ち向かう行為は「相対的な真理」に過ぎないのか?

上記のように、自殺原因の第一位は健康問題であり、第三位は家庭問題です。ただ、第二位と第四位も含めて、広い意味でのストレスが人を追い詰めていると考えられます。

そして、どんな人にも、大なり小なり、このストレスが襲い掛かります。私たちはこれといかにうまく付き合うかを考えなければなりません。

古来、日本では「逆境から逃げずに立ち向かう」ことが賞賛されてきました。たしかに、「頑張って困難を克服する」という努力と勝利の物語には誰もが魅了されます。しかし、それが常によい結果を生むわけではありません。実際は困難の質や状況によりけりであり、一律に正しいわけではありません。つまり、それは「相対的な真理」にすぎません。

たとえば、学生ならば、試験の前につい怠けてしまうといった経験は誰にでもあります。たしかに、そのような場合には、「逃げずに頑張る」という姿勢が正しいといえるでしょう。ですから、勉強やスポーツなどの学びの場である学校において、そういった美学が強調されるのはやむをえない面があります。しかし、理不尽な状況や非人間的な環境に置かれた場合、果たして「逃げずに頑張る」という姿勢が正しいのでしょうか。それは逆に状況を肯定し、過ちを生かし続けることに手を貸す行為とも言えます。

「相対的な真理」というのは、このような意味を指しています。

危険からさっさと逃げる動物を見習う

動物の場合、生命の危機を感じたら即刻逃げます。殺されると思ったら、必死の抵抗をします。私たち人間は頭でっかちなり、社会が複雑化したせいで、この動物の単純さを忘れてしまっています。私たちも「これはかなわない」「危ない」と思ったら、何ら迷うことなく逃げてよいのです。そのような場合に踏み止まって「頑張る」のは、自然の摂理に反することです。法律にも「緊急避難」という概念があります。たとえば他人の敷地に侵入する行為であっても、自動車との衝突を回避するためなら許されるという考えです。命を守るためなら違法行為すらやむなしと、法律でさえも認めています。

「人生に絶望した人へ 心の持ち方を変えてみる」では、己の周囲に「マイナスの鏡」を貼り巡らせているという、思考の「鏡地獄」の例を取り上げました。これに対して、日常生活や物理的な状況が「鏡地獄」と化している場合もあります。たとえば、過労を強いられているとか、家庭内で暴力や虐待にさらされているなどのケースです。そんな場合は、日常生活や物理的な状況そのものを変えることが解決策ですから、逃げることが正しいのです。会社がその“状況”ならば、きっぱりと辞めましょう。

積極的な問題解決の姿勢を尊ぶことは分かりますが、言ったようにそれも困難の質や状況状況次第であり、「美学」として自分や他者に無制限に適用すべきではありません。己の身の丈からして、襲い掛かるストレスが手に余る時は、物理的に克服不可能と判断して、とりあえず逃げましょう。それが身を守るための正しい行為なのです。

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